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健康学Q&A
栄養学
2019.03.12
健康学Q&A NO.10 話題の「ブレインフード」とはどんなものですか?
体の健康をキープするために、今からどんなことに取り組んでおけばいい?
皆様から多く寄せられる質問に対し、矢澤先生がQ&A方式で分かりやすく解説します。
よくニュースなどでも言われていますが、いまの日本は世界でも前例のない超高齢社会に突入しています。2018年に発表された高齢者白書では、65歳以上の高齢者人口の割合は27.7%にもなるそうです。これを読んでいる方が該当するかはわかりませんが、年齢を重ねるごとに敏感になるのが脳の問題。私も最近物忘れが多くて、講演会に資料を持たずに出かけてしまったり(笑)これも、いわゆるボケの原点です。
人間誰しも、年齢を重ねれば体の機能は衰えます。それは脳も同じで、記憶能力、学習能力が低下し、それが著しく低下すると認知症などと言われるわけです。そこで、認知症にならないように脳機能を維持する食べ物として分類されたのがブレインフードということになります。
食材を紹介する前に、脳の機能が低下する理由についてざっくりとお話しします。もともと人間の脳細胞は150億個以上もあり、そのうち毎日およそ10万個が死んでいます。10万個と聞くと多く感じるかもしれませんが、実は大した数ではなく、10年間でも(150億のうち)3億6千5百万個にしかなりません。つまり、脳細胞の減少はそれほど問題ではないんです。大切なのは脳細胞を若く保つことです。ニューロンと呼ばれる脳神経細胞には、下のイラストのようにシナプスというモジャモジャとした手のような突起がついていますが、これが情報伝達の役割を果たしています。しかし年齢とともにこのモジャモジャは萎縮していくので、その萎縮を減らす、もしくは伝達性を保つことを目的にした栄養素を含む食べ物を食べることがポイントになります。
脳は大食漢という言葉を聞いたことがあると思いますが、人間の体の中でもっともエネルギーを必要としている部位になります。これは、脳細胞を健常に保つためにも言えることですが、栄養をしっかり行き届かせる必要があります。そのために重要なのが血流です。脳の血流を促進する食材として代表的なのが青魚に含まれるDHA・EPAです。また、酸化を防いで血流をスムーズにするという視点でみると、緑黄色野菜のビタミンA・C・E、鮭の赤身に含まれるアスタキサンチン、お茶の成分テアニンなども有効です。
伝達機能を維持するという意味では、脳神経細胞の柔軟性を高めることがわかっているDHAが有効です。血流にも良いため積極的に取り入れるべき食材です。また、脳神経細胞に限らず、細胞の柔軟性を高めるという点ではLカルニチンが多いお肉の赤身、GABAが含まれる玄米や味噌、レシチンが含まれる大豆もブレインフードと呼ぶことができます。このように食材を挙げていくと「和食」にたどり着きます。普段の食事が洋食に偏っている方は、ぜひ和食食材に着目して献立を考えてみてはいかがでしょう。
この記事を監修された先生
早稲田大学規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 部門長。長年、企業や大学の研究機関で食の安全や健康食品の研究に従事。食べ物がいかに体に作用するかを分かりやすく解説。