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栄養学
2020.08.11
【特集】発酵食品のアレコレ
今回は簡単には語りつくせない 発酵食品の多彩な魅力をご紹介します!
発酵食品の世界は奥が深く、おもしろい。
皆さんは発酵食品についてどこまでご存知でしょうか? 納豆やお豆腐など、日本人には馴染みの深い食品ですので、概ね「健康に良い」「日持ちする」「おいしい」といったポジティブなイメージをお持ちの方が多いかもしれませんね。今回は、そんな発酵食品の基本的な知識やその種類、どんな健康メリットがあるのかなどについてもご紹介していきたいと思います。
まず発酵を知る上で、その存在なくして語れないのが微生物です。生ゴミを土に分解するのも、生活排水を浄化するのも微生物の役割であり、世の中にはさまざまな微生物が存在していますが、発酵食品の場合は、食品を発酵させることができる「カビ」「酵母」「細菌」の大きく3つに分類される微生物の力を借ります。
カビや細菌と聞くと、その響きに「えっ!」と思う方もいるかもしれませんが、例えば、お通じにも良い影響が期待できるヨーグルト。これは、簡単に言うと牛乳を発酵させたもので、ここでは乳酸菌という細菌の働きを利用します。
このように一言でカビや細菌といっても、体にいい働きをしてくれるものもあり、それらをうまく利用すると、おいしくなったり、体に良くなったり、化学変化が起こります。ちなみに牛乳は乳酸菌の他に、酵素やカビを混ぜるとチーズに変化します。また、日本酒であれば、米を米麹(カビ)と酵母で発酵させてつくります。その日本酒に酢酸菌(細菌)で発酵せるとお酢になります。世界にはそんな組み合わせから生まれた発酵食品がたくさんあります。
奥深い微生物や発酵の世界を勉強していくと、さらに楽しみ方が広がるかもしれません。
発酵は目に見えない微生物の力!
微生物はどんな働きをする?
発酵に役立つ微生物の主役たち!
もっと詳しく見てみよう!例えば乳酸発酵でつくるヨーグルト
実は発酵も腐敗も同じこと!
発酵と腐敗はどう違うの?
和食に欠かせない!日本は発酵食品の宝庫。
健康長寿の国として知られる日本ですが、その理由の一つは和食を中心とした健康志向の食文化にあるといえます。その和食で重要な役割を果たしているのが発酵食品。味噌、醤油、日本酒、みりん、酢など調味料、納豆や豆腐、漬物、鰹節などご飯のお供も発酵食品の代表格といえるでしょう。
日本でこれほどまで発酵食品が重宝されてきた理由として考えられるのが高温多湿な気候です。とくに味噌や醤油、酢、日本酒など、古くから和食に使われてきた基本の調味料は、麹菌の働きによってつくられてきました。国菌としても認められる麹菌は、日本の食文化の発展を支えてきました。
今でこそ、その有用性が注目されていますが、昔の人が感じた発酵食品のメリットはその保存性と言えるかもしれません。昔は冷蔵庫もなく、いかに保存のきく食べ物をつくるかということが重視されてきました。最初は塩を用いて保存食をつくってみたところ、風味が増したことから、発酵文化は広がり、受け継がれてきたと言われています。また、元の素材と比べて栄養価が高まる発酵食品も多くあります。たとえば、ゆでた大豆と納豆を比べてみるとビタミン類は大幅に増加。米ぬかに漬け込んだ漬物でも、微生物がビタミン類を新たに生み出すことで生野菜と比べて栄養価が高くなります。さらには免疫細胞のおよそ7割があるといわれる腸にも良い影響を与えることがわかっており、新型コロナウイルス対策として免疫向上への意識が高い方へのアンケートでは、ヨーグルトなどの乳酸菌飲料、味噌や納豆などの発酵食品を意識して食べているといった調査結果も出ています。
世界に誇る和食のひとつ!
日本は発酵食品天国です
発酵にはうれしい“アップ効果”がいっぱい!
栄養たっぷりでおいしい!発酵食品食べ合わせ
食べ物だけじゃない!発酵の未来
人々の未来に貢献する発酵技術
発酵とは自然の理。その理をうまく生活に取り入れることで、人類の文化や生活が発展した面もあります。発酵は何も食だけではありません。コレラを救った抗生物質ペニシリンも微生物の恩恵をうけたもの。また、現代では環境汚染の浄化にも微生物の力が使われ、さらなる研究が続けられています。
人間が知っている微生物はほんの一握りに過ぎません。今後新しい発見によってどのように進歩していくのか、そう考えるとなんだかワクワクしますね。
監修:管理栄養士・博士(スポーツ健康科学) 新生 暁子先生
この記事を監修された先生

国立健康・栄養研究所の栄養教育プログラムで技術補助員として従事。2008年にはシドニーオリンピック女子マラソン金メダリストの高橋尚子率いるチームQに加入し、栄養管理を担当。現在はフリーランスの管理栄養士として活動。