1. 更年期の不調で多い首・肩のコリ、実は頚椎症の可能性も。
 

　40～60代になると、男女ともにホルモンバランスが崩れて起きる更年期障害に悩む方が増えてきます。更年期の不調は「不定愁訴」といわれるように、実に様々な症状があります。動悸やめまい、ほてり、不眠、便秘、目の疲れ、頭痛、肌の乾燥、気持ちの浮き沈み……。その中でも、多くの方が経験するのが首・肩のコリです。こうした症状を感じた場合、「更年期だから」と我慢したり、症状を緩和する薬を飲んでやり過ごしたりしがちですが、もしかするとそれはホルモンバランスだけでなく、加齢や生活習慣による頚椎（首の骨）のトラブルが関わっているかもしれません。更年期障害の治療を受けたり、更年期を過ぎても症状が続くようなら、頚椎症などの可能性も考えられます。「もしかしたら…？」と思ったら、一度受診してみましょう。診療科は整形外科、耳鼻咽喉科、脳神経外科などです。
 

 
 
※日本女性医学学会 女性医学ガイドブック 更年期医療編2014年度版より

グラフは女性を対象にした調査です。男性の場合は、筋力低下、ひげの伸びが遅くなる、頻尿、性機能低下、記憶力・集中力の低下などの症状も。

2. 加齢や生活習慣により起こる変形性頚椎症とは？
 

　頚椎は7つの骨で構成され、骨と骨の間にクッションとなる椎間板が挟まれています。一般的に70代くらいになると、椎間板の水分が失われて弾力がなくなり、潰れたりひびが入ったりして変形します。これが変形性頚椎症です。変形性頚椎症の症状には、首のコリや首の後ろの痛み、手足のしびれなどがあり、治療は痛み止めや筋肉のコリをほぐす薬物療法が一般的。症状に応じて首をコルセットで固定したり、姿勢改善のための運動療法を取り入れることもあります。重症化すると、手術が必要になることも。次ページで解説しているストレートネックも、放置すると変形性頚椎症に進行するため、スマホをよく使う方はさらにリスクが高まります。つらい症状が慢性化しないよう、早めにケアしましょう。

頚椎や椎間板、靭帯などが正常に整っているため、脊髄を刺激することはありません。

老化により頚椎や椎間板、靭帯などが変形。それが脊髄神経を刺激して痛みを与えます。

3.手軽にできるストレッチや生活の見直しでセルフケアを。
 

　頚椎症を予防するには、首と肩の筋肉をやわらかく保つことがポイントです。まずは、肩を動かさないようにして、首をゆっくり左右に回して振り返ってみてください。スムーズに真横まで向けなかったら要注意です。手軽にできるストレッチで首と肩のコリを取りましょう。コリを悪化させる原因のひとつが、頚椎から肋骨につながる斜角筋。ここをゆるめる「首の前伸ばし」と、ストレートネックを改善する「あご引き」の2つのストレッチをご紹介します。ただし無理は禁物なので、カラダの状態をみながら試してみてください。また、必要以上にスマホを使わない、定期的に視力検査をして必要に応じて矯正する、自分に合った枕を使うといったように、日常生活の中で、できるだけ頚椎に負担をかけない工夫も必要です。

①椅子に座り、左肩と鎖骨の間に右手を当ててゆっくり上を向く。

②上を向いたまま顔を右に向けて、左首すじの斜角筋を伸ばす。

①首と頭が前傾しないように気をつけて、背筋をしっかりと伸ばす。

②首の前の筋肉を使って顎を後ろにグッと引いてから力を抜く。