Health
2024.01.09
【特集】誤嚥の原因となる喉の力の衰えを「姿勢のクセづけ」で予防
水をひと口飲んだあと、人差し指を喉仏の少し上に当てます。この状態で、30秒間に何回唾液を飲み込めるかをチェックしてみましょう。下のグラフが「喉年齢」の目安です。
※日本呼吸器学会専門医の大谷義夫医師が、自身のクリニックの患者372人(20代~80代の各年代50名)を対象に実施した結果
1.40代から注意!加齢により衰えてくる「飲み込み」の仕組み。
喉には、空気の通り道である「気管」と飲食物の通り道である「食道」があります。気管と食道の一部はつながっていますが、通常は間違うことなく、飲食物は食道から胃へと送られます。これは、飲食物が喉を通過するとき、喉仏のあたりにある「喉頭蓋」が気管にふたをして、飲食物が気管へ入り込むのを防いでくれるから。これが嚥下(飲み込み)の仕組みです。ところが、年齢を重ねるにつれて、うまく嚥下できないことが増えてきます。その主な理由は、下顎や喉にある「喉頭挙上筋群(こうとうきょじょうきんぐん)」の衰え。これらの筋肉は喉頭蓋を動かすのに使われるため、衰えると気管にうまくふたをできなくなり、飲食物が気管に入ってしまいます。これが誤嚥です。喉頭挙上筋群は40代から衰え始めるといわれています。喉仏の位置が下がってきたかな?と思ったら、そのサインです。
飲み込む反射が起こる前に、食べ物が気管に入っている状態です。
口の中に食べ物を留めておけなかったり、のどに流れ込んだ時にごっくんと飲み込む反射を起こせなかったりするために起こります。
飲み込む反射が起こる時に、食べ物が気管に入っている状態です。
気管と喉の間にある蓋(=咽頭蓋といいます)が充分に気管をおおえなかったり、おおうタイミングが遅れたりするために起こります。
飲み込む反射が起こった後に、食べ物が気管に入っている状態です。
喉に残っている食べ物が気管に流れ込むことによって起こります。食事が終わった後に起こることもあります。
©えすてぃちゃん/熊谷櫂
2. 飲み込む力が弱いと肺炎や感染症の原因に!?
誤嚥が起きると、気管に入った飲食物や唾液を出そうとして「むせ」が起こります。むせること自体は体の正しい反応ですが、以前よりむせることが多くなったと感じたら、喉の力が衰えて異物が気管に入りやすくなっているサインなので要注意。口の中の細菌やウイルスが気管や肺に入り込むと、様々な病気を引き起こしかねません。中でも気をつけたいのが「誤嚥性肺炎」。厚生労働省によると、日本人の死因の3位が肺炎で、このうち約7割が75歳以上の高齢者。そして、高齢者の肺炎の7割以上が誤嚥性です。しかも、誤嚥性肺炎による死亡者数は急増しており、2030年には13万人と予測されています。まさに、高齢者にとっては身近なリスクなのです。また、誤嚥は肺炎同様、風邪やインフルエンザ、新型コロナなど感染症全般にかかるリスクも高めます。
3.誤嚥を防ぐポイントは食事の姿勢と喉筋力の維持。
恐ろしい肺炎や感染症を引き起こす誤嚥を防ぐポイントのひとつは、食べるときの姿勢と食べ方。喉から食道に入っていきやすい姿勢を保ち、歯をしっかり使って食べ、口を閉じて飲み込みます。高齢で姿勢を保ちにくいような方は、姿勢サポーターなどで良い姿勢のクセづけを習慣づけると良いでしょう。もちろん、歯磨きやマウスウォッシュをこまめに行い口の中を清潔に保つことも大事です。そして、誤嚥を防ぐもうひとつのポイントは、嚥下力が衰えないよう、日頃から喉頭挙上筋群を鍛えること。座ったままでもできる手軽なストレッチもあるので、ぜひ試してみてください。
監修:
医師 医学博士
日本耳鼻咽喉科学会専門医
日本アレルギー学会専門医
補聴器適合判定医
木村 聡子 先生