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パーツ別お悩み
2016.11.24
特集:おしっこの悩み 前立腺肥大と膀胱炎に注意
年を重ねるごとに増えるおしっこの悩み
中高年になると誰にでも起きてくる「おしっこのトラブル」が注目されています。症状はさまざまですが、「頻尿」、「残尿感」、「尿漏れ」、「排尿困難」などを訴える場合が一般的です。これらの症状は男性と女性に共通ですが、身体的構造に差があるため、男女それぞれで原因が異なります。男性なら男性特有の病気「前立腺肥大症」を、女性なら尿路感染症の一つ「膀胱炎」を疑ってみるべきでしょう。
おしっこの「役割」と「仕組み」
私たちは、食べ物や飲み物を消化・吸収し、代謝して得たエネルギーで生命活動を営んでいます。その代謝の過程で「老廃物」が発生します。血液が全身をめぐって栄養を運び、不要となったもの(老廃物)を回収してきます。この老廃物を体外へ排出するのが「尿」の大切な役割なのです。
おしっこ自体は全身をめぐった血液と水分からできています。「腎臓」は、運ばれてきた血液中の老廃物をろ過します。再利用できるものは再び血液中にもどし、不要なものだけを尿として膀胱に送り出します。膀胱には二つの役目があります。一つは蓄尿です。尿を溜めておくタンクの役目で、一定量の尿が溜まると「おしっこがしたい」と知らせてくれます。もう一つは排尿です。尿を排出するポンプの役目をしています。尿が漏れないよう普段は閉じている尿道括約筋という筋肉を開き、膀胱を収縮して溜まった尿を押し出します。この一連の働きが排尿です。
男性特有のトラブル「前立腺肥大症」
男性で、トイレが近い等の原因として多い病気が「前立腺肥大症」です。前立腺は男性特有の器官で、精液の一部の前立腺液をつくる臓器です。膀胱の真下に位置し、尿道の周りを取り囲んでいます。大抵の男性が50歳を過ぎる頃から前立腺が肥大化して大きくなります。そのため尿道が不自然に刺激され頻尿が起きたり、残尿感や尿漏れの原因となります。
前立腺肥大症は進行の度合いによって第一期から第三期に分けられます。第一期では尿回数が増加する「頻尿」(とくに夜間に3回以上)、トイレに行く前に漏れてしまう「尿失禁」、逆になかなか尿が出なかったりします。第二期には昼間でも頻尿になったり、排尿後も残っているような感じがする「残尿感」、尿が出づらい「排尿困難」が起こります。第三期になると、排尿障害が進み膀胱内の残尿量が増加したり尿意が低下することで、尿が漏れたりします。膀胱内の残尿量が多いと「腎不全」を併発する恐れもあります。
日常生活では、
1.排尿を我慢しない
2.適度に運動する
3.刺激の強い食事はひかえる
4.適度な水分を摂る
5.過度のお酒をひかえる
などの点に気をつけましょう。
※前立腺肥大症とまったく同じ症状で「前立腺がん」の場合がありますので、気になったら医師に相談することが大切です。
女性に多いトラブル「膀胱炎」
おしっこのトラブルは女性に多いと言われます。これは体の構造によるもので、女性の尿道は男性と比べ短く、膀胱に圧力がかかるとおしっこが出やすくなります。また、尿道が短いことで細菌に感染しやすい、妊娠や出産で尿道や膀胱を支える筋肉が緩み、弱くなってしまうことも一つの要因と言えます。
女性にとって代表的なトラブルは「尿路感染症」です。尿の通り道に大腸菌などの細菌が感染して炎症を起こすもので、抵抗力の弱い高齢者もかかりやすいことが知られます。主な尿路感染症には「膀胱炎」、「尿道炎」などがあります。膀胱炎には急性と慢性があります。排尿時の痛み、頻尿、残尿感を伴うのが急性膀胱炎、症状が軽く、あまり自覚がないことも多いのが慢性膀胱炎です。健康なときには抵抗力があるため膀胱炎を起こすことはあまりありません。しかし、長時間おしっこを我慢したり、疲労感や風邪、冷え、ストレスなどが続いて抵抗力が弱ると、膀胱炎にかかりやすくなります。
膀胱炎も症状の度合いで進行度を知ることができます。第一期ではトイレの回数が増える、第二期では排尿後しみる、第三期では残尿感のため何度もトイレに行く、第四期では尿の濁りや血尿がみられます。
悪化すると厄介な病気です。そうならないためにも症状が進行しないうちに対処しましょう。
膀胱炎は普段の生活に気をつけていれば防げます。
1.トイレは我慢せずこまめに行く
2.適度に水分を摂り、どんどんおしっこする
3.過労や過度なダイエットを避け、バランスの良い食事を摂る
4.軽い運動と十分な睡眠で疲労やストレスをためない
などを心がけましょう。
※思い当たる点があったら泌尿器科へ行きましょう。膀胱炎には抗生物質の投薬が大変有効です。
治った後にも注意が必要です
普通感冒は感染から発病まで5〜6日ほどが自覚症状のない潜伏期間です。そして発症後、数日で治ってしまいます。インフルエンザは一般的に1〜3日の潜伏期間を経て発症します。そして、症状が軽快した後でも、他人へうつしてしまうことがあります。自分では治ったと思っても、2日ほどは仕事や外出は控える方がよいでしょう。
また、「かぜは万病のもと」と言いますが、風邪だと思ったら、まったく別の重大な病気だったということがあります。
逆に、風邪をきっかけに体調を崩して、別の病気にかかってしまう場合があります。例えば、治癒後3〜10日後に発症するインフルエンザ肺炎です。その他にも髄膜炎、中耳炎、インフルエンザ脳症・結膜炎・副鼻腔炎・心筋炎などが代表的な合併症です。風邪の症状を軽く見てはいけません。合併症を予防するためにも、早めの医療機関の受診を心がけましょう。
おしっこは健康のバロメーター
おしっこの回数や色、量で体の異常が分かります。健康な人は、1日平均で3〜10回が正常な排尿回数です。おしっこの量が極端に少ない場合、回数は多いのに一度に少量しか出ない、出にくい場合には泌尿器の病気を疑う必要があります。
正常なおしっこの色は濁りがなく、薄い黄色をしています。水分を多く摂ったときなどには色が薄くなり、反対に長く溜めたり、運動後などには濃い色になることがあります。
褐色や赤褐色の尿は肝臓や腎臓の異常が疑われます。尿が濁っているときは細菌感染、泡立ちが消えない場合はたんぱく尿、排尿時に痛みがある場合は膀胱炎や尿道炎の可能性があります。
しっかり摂って、しっかり出す
成人の体内の水分量は約60%ですが、加齢によって減っていき、高齢者では50%ほどになってしまいます。意識的に水分を補給して、体内の水分バランスを維持しましょう。体に必要な水分量は1日に約1.5L。何度もトイレに行くのがわずらわしいという理由で我慢せず、十分に水分を摂って、どんどんトイレに行き、毎日の尿で健康状態をチェックしましょう。そして、もし異常を感じたら、ひとりで悩まずに積極的に医師に相談しましょう。