骨折・転倒は、介護が必要になった原因の４位に。

平成30年度の高齢者白書の「65歳以上で介護が必要になった原因」を見てみると、１位は認知症（18.7%）、２位は脳血管疾患（15.1%）、３位は高齢による衰弱（13.8%）、４位に骨折・転倒（12.5%）と続いています。どれも介護予防でケアすべき項目ですが、今回は「骨」について考えていきたいと思います。
骨折・転倒については、特に75歳以上になると、その割合はグンと上がります。とりわけ自宅内での転倒が６割と言われており、筋力の低下などから、なんでもない段差に足をひっかけてつまずくケースも増えてきます。若い頃は転んだくらいでは骨折しなかったものが、高齢期に入るとすぐに骨折につながってしまいます。その理由は骨密度が低下してしまうからです。骨粗しょう症などでも知られるように、いわゆる骨がスカスカの状態は、多少の衝撃ですぐに折れてしまいます。また、骨密度の低下が進むと、知らないうちに起こる骨折「圧迫骨折」も起こりやすくなります。ちなみに、骨密度の低下はホルモンバランスに起因することから女性に多く見られますが、男性の骨密度も加齢とともに低下するため、安心は禁物です。
栄養でコントロールして、上手な歳の取り方をめざしましょう。
 

骨密度が低下し要介護になるまでの背景とは？

たかが骨とあなどるなかれ！骨密度の低下が招くリスク

新陳代謝を繰り返す！骨が生まれ変わるメカニズム

人間の骨は約３年で生まれ変わると言われており、破骨細胞と骨芽細胞がバランスよく働いています。しかしバランスが崩れると、骨密度の低下を招く結果になってしまいます。

自分では気づかないうちに進行する痛みの少ない圧迫骨折

圧迫骨折は連鎖します！そうなる前に
骨に必要な栄養素を補う！

カルシウムを摂るだけでは骨は生まれ変わらない！

骨は常に代謝をしており、今この瞬間も新しく生まれ変わっています。では、加齢とともに骨密度が低下するのを防ぐためには何が必要なのか、栄養面から見ていきましょう。
ご存知の方も多いと思いますが、骨の主成分は「カルシウム」です。「牛乳を飲む、小魚を食べて丈夫な骨を作ろう（間違いではない）」と言われた方もいらっしゃるかもしれませんが、しかし、カルシウムをたくさん摂るだけでは新しい骨は作られません。カルシウムを骨に生まれ変わらせるためのサポート的栄養素が必要となってきます。そのひとつが「ビタミンD」。人は日光を浴びることでビタミンDが作られますが、もちろん食事からの摂取も有効です。ビタミンDは血中のカルシウム濃度を高め骨の形成を促進する働きがあります。また「ビタミンK」も欠かせません。ビタミンKは、カルシウムが骨に沈着するのを助ける働きがあります。この３つの栄養素は「骨形成のゴールデン・トライアングル」と呼ばれる、とても重要な成分です。
 

シニア世代に必要な栄養素「骨形成のゴールデン・トライアングル」

「骨形成のゴールデン・トライアングル」の働きおよび骨の健康を維持する栄養素についてもご紹介します。

寝たきりを防ぐには転ばない体づくり
体を動かして骨力アップ！

骨に刺激を与えれば、骨密度の低下は抑制できる。

　一度骨折してしまうと、完治までに時間がかかって筋力が低下し、さらに転びやすく、骨折しやすい体になってしまいます。そうならないためには普段から転ばない体づくり、多少の衝撃では折れない骨づくりを目指すことが大切です。

転ばない体づくりは、まず筋力をつけること。何もしなければ年齢とともに筋力は低下するのは必然ですが、筋肉は何歳になっても鍛えられるため無駄はありません。もっとも手っ取り早いのは歩く、早歩きするなどのウォーキング。さらに、運動前には関節の可動域を広げるストレッチをすれば、体のバランスは良くなり、転ばない体に一歩近づきます。折れない骨づくりも、同様にウォーキングでOK。太陽の光を浴びればカルシウムの吸収を助けるビタミンDが合成され、さらに、体重負荷によって骨への刺激にもなります。骨は壊れると再生するメカニズムが働くため、多少の刺激を必要とするのです。まずは毎日出歩くことを心がけるだけでも違いが生まれますので、無理のない範囲で始めて見ましょう。

マイペースが基本！かんたん筋力＆骨力アップ

 
監修：済生会横浜市東部病院（整形外科）　船山 敦先生