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Health
季節の症状
2016.11.24
特集:冬に多い病気―寒さに負けない―
寒さと温度の変化が血管の負担を大きくする
冬に起きやすい病気には、寒さそのものが原因する場合と室内外の気温差が原因となる場合があります。第一に冬の寒さが及ぼす影響は、人の体温調節方法と深く関わっています。体温調節の方法は、夏と冬で異なります。夏は汗が蒸発するときに体から熱を奪い、体温の上昇を防ぎます。同時に皮膚の表面近くの血管が拡張し、血管からも体温を逃がしています。反対に、寒い冬には真皮の中にある立毛筋が収縮して毛穴や汗腺の穴を塞ぎます。このとき皮膚にできるのが鳥肌で、体の表面の穴を閉じて体から熱が逃げるのを防ぎます。さらに、交感神経が緊張して血管を収縮させ、血流量を減らして皮膚から体温を逃がさないようにします。このとき血管収縮によって血行不良が起こるため、血圧が上昇しやすくなります。
第二に、冬は寒さだけでなく、生活上の温度変化が血管に大きな負担をかけています。暖かい場所から寒い場所へ移動すると血圧が急激に上昇するなど、血圧が大きく変化します。大きな温度差は血圧に影響を与え、心臓や脳での血管障害をもたらすことがあるのです。暖かい部屋から寒い屋外への移動、家の中でも場所によって温度差が発生しているところもあります。玄関やトイレ、風呂場、脱衣場などへの移動や、夜中にトイレに行くときなどは注意が必要です。そして冬場に急増するのが、脳出血や心筋梗塞などによる突然死です。
冷えから病気になる「内臓型冷え性」
私たちは普段、食事や筋肉の運動で体内に熱を作り出し、温まった血液を全身に巡らせて体温を維持しています。寒くなると交感神経が働き、手足の血管を収縮させて血液を体の中心に集めようとします。これは手足より、生命維持に重要な内臓を優先するという人体の防衛システムなのです。
この反応が過剰だと手足が冷えきってしまう「四肢末端型冷え性」を引き起こします。日本人女性に最も多いタイプの冷え性がこれです。
最近では、冷え以外にさまざまな症状を誘発してしまう怖い冷え性が増えているようです。これは内臓型冷え性といい、一般的な冷え性と比べて手足の冷えが少なく、お腹が冷える、風邪をひきやすい、倦怠感が続く、厚着をしても温まらないことなどが特徴です。
内臓型冷え性の主な原因は自律神経の乱れによる血行不良と考えられています。自律神経がうまく働かないと、寒くても手足の血管が収縮しなくなるので、十分な血液を内臓に集めることができません。そのため内臓が冷えて機能が低下してしまいます。内臓の温度は37.2度〜38度、体温は36.5度程度が理想です。内臓温度が1度下がると基礎代謝は約12〜15%も低下するといわれています。その結果、徐々に免疫力が低下していき、様々な病気にかかりやすくなってしまうのです。
内臓型冷え性の場合、末端の手足は温かいため、症状に気づきにくいという難点があります。内臓温度の目安を知るには、体温計で10分間測ると内臓温度にほぼ近づくとされます。個人差がありますが、36.3度以下の場合は内臓型冷え性の可能性があるといわれます。
自律神経を乱す要因はストレス、過労、加齢などです。体を冷やさない工夫とともに、普段から自律神経を整えることを心がけましょう。
寒さと「関節痛」
冬は暖かい季節と比べて、腰やひざなどの関節に痛みやしびれを訴える方が多くなります。
原因はいろいろありますが、寒い冬の関節の痛みは、冷えによる血行不良が原因の一つと考えられます。寒さで血行が悪くなると関節周辺の筋肉が強張ってしまうため、腰やひざなどの関節に普段以上に大きな負担がかかってしまいます。これが冬になると関節が痛む理由です。
寒い時期に関節をいたわるには、体を冷やさないようにするのが基本です。そのためには、まず部屋の中を暖かくしておくことが肝心です。手元にはいつも上着を一枚用意するようにし、寒い場所へ移動する際には関節が冷えないような服装を心がけましょう。このとき、腰やひざなどの関節を冷やさないようにすることが重要です。服装だけでは温めにくい部分ですので、腹巻きやサポーターなどを利用するのもおすすめです。また、お風呂で体を温めることで血行が促進され、冷えの予防にもつながります。湯船の中で軽いストレッチを行うのもよいでしょう。
日々の習慣から関節を気づかうことで、冬場の関節痛を防ぎましょう。