Health
2023.06.02
【特集】悪玉コレステロール対策で動脈硬化を予防
肌のシワやシミ、筋力の衰えなどは比較的自覚しやすい老化現象ですが、自分ではなかなか気がつけないのが、血管の老化である動脈硬化。そして、これと密接に関係しているのがコレステロールです。自覚症状がないだけに、気がつけば危険レベルになっていた…ということも。だからこそ、日頃からの対策がものをいいます。
□喫煙する
□あまり外出しない
□暇つぶしはテレビや読書
□つい夜更かしをしてしまう
□ストレスを抱え込みがち
□卵や魚卵、モツ料理が好き
□野菜はあまり食べない
□お腹いっぱい食べる
□洋菓子やスナック菓子が好き
□お酒をよく飲む
動脈硬化の真の原因は酸化LDLコレステロール
コレステロールは「健康の敵」のように思われがちですが、必ずしもそうではありません。主に肝臓でつくられる脂質の一種で、細胞膜を形成したり、副腎皮質ホルモン※や胆汁酸※、ビタミンDなどの原料となるなど、人体には必要な成分です。血中ではタンパク質と結びついて存在しますが、結びつくタンパク質の種類によって、HDLコレステロールとLDLコレステロールの2つに分かれます。このうちHDLコレステロールは、余分なコレステロールを肝臓に回収し、体外に排出するため「善玉コレステロール」と呼ばれています。また、LDLコレステロールは、肝臓でつくられたコレステロールを体のあちこちに運んでくれますが、増えすぎると動脈硬化などの原因となることから、「悪玉コレステロール」と呼ばれています。
では、なぜLDLコレステロールが動脈硬化を引き起こすのでしょうか?動脈の血管は、心臓から勢いよく送り出される血液の圧力に耐えられるよう、血管壁が厚く伸縮しやすくなっていますが、年齢を重ねるにつれ、弾力が失われて硬くなります。また、血管の内壁は常に血流がぶつかることから、ダメージと修復を繰り返していますが、老化などで修復が間に合わなくなると、ダメージが蓄積します。そこに悪玉コレステロールが沈着して酸化すると、プラークと呼ばれる塊ができて血管が狭くなるとともに、血管が硬く脆くなってしまうのです。これが動脈硬化で、この状態が進行すると、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞といった命に関わる病気にもなりかねません。つまり、真の悪玉は、酸化したLDLコレステロール=超悪玉コレステロールだったのです。
今月の注目ワード
●副腎皮質ホルモン
副腎という小さな臓器から分泌されるホルモンの総称。糖や脂肪の代謝に関与したりストレスに対抗するコルチゾール、腎臓でナトリウムと水の再吸収を促すアルドステロン、女性らしさをつくるエストロゲンなどがあります。
●胆汁酸
脂質の代謝に関与し、ビタミンA・D・Eの吸収を促す有機酸物質です。肝臓でつくられ小腸で働き、再び肝臓に回収されるというようにグルグル循環していますが、一部は余分なコレステロールを含んで体外へと排出されます。
高コレステロール血症は40代から急増
本人間ドック学会によると、人間ドック検診によって高コレステロール血症を指摘される人の割合は、40代になると増加します。そして、男性は50代をピークにその割合は落ち着きますが、女性の場合は50代以降も増え続け、60代では半数以上の方が指摘されているとの結果が。これは、更年期以降に女性ホルモンの分泌が減少することが原因だといわれています。

出典:日本人間ドック学会の「2014年度の集積データ解析(その1)」
コレステロールの指標としてnon-HDLコレステロール(改善薬非使用の方)のデータを使用。
判定区分B?Dとなる150mg/dL以上の方を抽出。
コレステロール管理はHDLとLDLのバランスにも注目
動脈硬化を予防するには、喫煙や運動不足といった生活習慣を見直すとともに、コレステロール値を管理していくことが大切です。現在、脂質異常症※と診断される基準値は、HDLコレステロール40mg/dl未満・LDLコレステロール140mg/dl以上となっています。ただし、先述のようにコレステロールは体に必要なものなので、単に少なければ良いわけではありません。そこで注目されるのが「LH比」です。これは、血中でのHDLコレステロールに対するLDLコレステロールの比率で、LH比が1.5以下だと血管の健康状態は「良好」、2.0以下だと「コレステロールの蓄積あり」、そして2.5以下となると「血栓ができている可能性あり」と判断されます。
厚生労働省が定めた日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日のコレステロール摂取量目安を200mg未満としています。これは、鶏もも肉なら約200g 、シュークリームなら1個弱に相当します。あくまでも目安ではありますが、現代日本の食生活では、ちょっと厳しいかもしれませんね。そんなときは、コレステロール値を調整するDHAやEPAが豊富な青魚、悪玉コレステロールを下げるオリーブオイルやアマニ油などを料理に取り入れると良いでしょう。手軽なサプリメントもおすすめです。
今月の注目ワード
●脂質異常症
血中の脂質が多すぎる、または少なすぎる病態の総称。一般的には、LDLコレステロールが基準値より多いと「高コレステロール血症」、LDLコレステロールと中性脂肪のいずれか、または両方が多いと「高脂血症」に分類されます。
監修:
早稲田大学規範科学総合研究所
ヘルスフード科学部門 部門長
矢澤 一良先生
この記事を監修された先生

早稲田大学規範科学総合研究所ヘルスフード科学部門 部門長。長年、企業や大学の研究機関で食の安全や健康食品の研究に従事。食べ物がいかに体に作用するかを分かりやすく解説。