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2023.02.21
【特集】つらい「冬の肩こり」を予防する
しんしんと冷え込むこれからの時期は、肩こりや腰痛がいつも以上につらく感じることが多いもの。でも、この時期の肩こりは、単に冷えからくるだけではなく、冬の生活ならではのちょっと意外な理由があります。間違ったケアで逆に症状を悪化させてしまうことのないよう、まずは冬の肩こりの特徴を知っておきましょう。
□もともと寒さが苦手
□入浴はシャワーが多い
□天気や温度で体調が左右されやすい
□マフラーやショールが手放せない
□厚着をしがち
□外出は徒歩が多い
□寒いと出不精になる
□暖房はできるだけ使わない
□こたつによく居る
□冷え性
寒さから体を守る気持ちが肩こりを招く!?
肩こりや頭痛、腰痛などの慢性的な痛みの症状に悩まされている方にとって、冬は受難の季節。「寒いといつも以上に肩こりがひどくなる」「肩だけでなく、首や背中もガチガチになってつらい」といったお声をよく聞きます。
冬に肩こりが悪化する原因はいくつかありますが、意外と気づかない要因として「姿勢」があります。人は寒いと感じると、体温を放射しないようにするため、自然と「巻き肩※」になります。たとえば、木枯らしが吹く寒い日に外を歩くときは、コートの襟を立てて肩を内側に巻くようにします。そして、冷気が顔に当たるのを防ごうとして俯き気味になりますが、これは、スマホを使うときと同様の姿勢で、「ストレートネック※(スマホ首)」の原因になります。こうした姿勢を続けていると、肩や首、背中などの筋肉が硬直し、血流が滞って疲労物質がうまく代謝できなくなります。この状態を、東洋医学では「瘀血(おけつ)※」といいます。一方、筋肉の中には痛みを感じる知覚神経が走っており、硬直した筋肉組織が神経を締め付けて痛みを誘発します。こうしたことから、冬は肩こりが特につらいと感じられるのです。
寒いからといって肌着を何枚も重ね着したり、身動きがしづらいほど厚着をしたりするのも、肩こりを悪化させる原因のひとつです。なお、こうした厚着は体を締めつけて血行を妨げてしまうので、冷え対策としてもあまり有効とはいえません。
さらに、冬といえばこたつという方も少なくないと思います。でも、こたつは猫背になりやすいだけでなく、食事をするのもテレビを観るのもこたつ、というように長時間居座っていると腰への負担もかかります。また、こたつでパソコンは、デスクで作業するよりも腕や肩への負担が大きくなるので要注意です。
今月の注目ワード
●巻き肩
肩が正常な位置よりも前方内側に入り込んだ状態。仰向けに寝て肩が床につかなかったり、横から見て肩が耳より前に出ていたら巻き肩の可能性大。頭が前に突き出るため、背中に負担がかかります。
●ストレートネック
本来、緩やかなS字カーブを描く首の骨が真っ直ぐになった状態。首に負担がかかり、肩こりや頭痛の原因になります。スマホを長時間使うことでなりやすいため「スマホ首」とも呼ばれています。
●瘀血(おけつ)
東洋医学の考え方で、全身あるいは体の一部の血流が滞った状態。長く続くと免疫力が低下したり、さまざまな病気を引き起こすといわれています。また、冷えると悪化すると考えられています。
肩こりに悩む人にとって冬は「受難の季節」
あるインターネット調査会社が行ったアンケートで、肩こりの人に「1年の中で最も肩がこる季節」を聞いたところ、春、夏、秋はいずれも一桁台なのに対して、冬は84.2%と圧倒的な差が見られました。また、別の調査では冷えや寒さを感じている人は、感じていない人に比べると約2倍の割合で首や肩のこりを感じているとの結果も。これらのことから、肩こりに悩む人にとって冬は「受難の季節」といえそうです。

出典:2015年ネットリサーチDIMSDRIVE調査

出典:2021年ウーマンウェルネス研究会 supported by Kao調査
予防・改善のキーワードは「姿勢」と「血流」
このように、冬の生活には知らず知らずのうちに肩こりを悪化させる要因が潜んでいます。でも、セルフケアで予防・改善することは可能。そのためのキーワードは「姿勢」と「血流」です。
まず、姿勢については、下のイラストのような巻き肩予防のストレッチがおすすめです。
背筋を伸ばすサポーターやストレートネック予防のサポーターを利用するのも良い方法です。
血流については、しっかり入浴して全身の巡りを良くするほか、鍼灸などでこりやすい部位を刺激するのも効果的です。ケアグッズも上手に活用して、少しでも快適に冬を過ごしましょう。
①両手を頭の後ろで組み両肘を外側に広げながら深呼吸をする(3回)
②両肩を上げてから脱力して降ろす(3回)
③左右の肩甲骨を寄せてから脱力する(3回)
④両肘を軽く曲げた状態で肩を回す(内回し10回+外回し10回)
監修:東京神田整形外科クリニック
院長
田邊 雄先生
この記事を監修された先生

医学博士、日本整形外科学会認定整形外科専門医。一般整形外科に加え、低身長の悩みに対する治療などにも取り組んでおり、「身長先生」として、小児身長のことやリハビリテーションの重要性などについて積極的に動画配信を行っている。